高田研究室で行われている実験


DNAカーテン実験

我々の研究室では、全反射蛍光顕微鏡を用いてDNA上のタンパク質の動態やDNAの構造変化を1分子レベルで観察しています。この実験ではDNAをスライドガラス上に固定する必要があります。我々はDNAカーテン法と呼ばれる方法でこの固定を行っています。この方法では、スライドガラス上に脂質2重膜を張っておき、アビジン-ビオチン相互作用によって脂質分子とDNAを結合させます。一方で、スライドガラス上にナノテクノロジーを用いてバリアパターンを描画しておき、溶液流を用いて脂質2重膜上に結合したDNAをそのバリアに押し付けることによってDNAを固定します。この固定方法によって、既存の方法と比較して100から1000倍程度の個数のDNA分子を同時観察することができます。この方法を応用することによって、DNAの複製、転写、修復、高次構造形成のメカニズムを1分子レベルで解明することを目指しています。また、分子動力学シミュレーションを用いて、それらのメカニズムをさらに詳細に理解することを目指しています。

応用例

コンデンシンは分子モーターである

(Terakawa et al. (2017) Science 358:672)

コンデンシンは染色体の折り畳みに重要な役割を果たすタンパク質です。しかし、その機能メカニズムは明らかではありませんでした。この研究では、DNAカーテン実験によって、コンデンシンがATPの加水分解エネルギーを使ってDNAに沿って移動する分子モーターであることを示しました。この観察によって、コンデンシンが10キロ塩基対の距離を1秒間に60塩基対の速度で移動することができることがわかりました。また、一回のATP加水分解反応につき約50ナノメートルもの距離を移動できることも明らかにしました。これらはDNA上を進む他の分子モータータンパク質と比較して非常に大きい値です。コンデンシンが分子モーターであるという発見は、染色体DNAの折り畳みの分子メカニズムの解明にとって非常に大きなステップとなりました。

RecBCDはDNA上の障害物を取り除きながらスムーズに移動する

(Terakawa et al. (2017) Proc Natl Acad Sci USA 114:E6322)

染色体DNAには多くのタンパク質が結合しています。DNA上を移動する分子モータータンパク質は、そのような混雑環境下で機能を果たさなければなりません。それらの障害物となるタンパク質が分子モータータンパク質にどのような影響を与えるかは明らかでありませんでした。この研究では、DNAカーテン実験によって、RecBCDと呼ばれるDNA上を一方向に移動するタンパク質が、多くのタンパク質が結合しているDNA上を移動する様子を観察しました。この結果、RecBCDは障害物であるタンパク質を取り除きながら移動することができることがわかりました。この振る舞いは、障害となるタンパク質が1つだけ結合しているDNA上を移動する場合とは異なりました。この研究の結果、DNA分子モーターが、障害物タンパク質が数多く結合していることを利用して、それらを取り除いていることが示唆されました。

相同組換えにおいて相同配列は3塩基ずつ比較される

(Lee, Terakawa et al. (2015) Science 349:977)

相同組換えはすべての生物で重要な役割を果たしている。しかし、その分子メカニズムは明らかになっていませんでした。この研究では、DNAカーテン実験によって、相同組み換えタンパク質RecA/Rad51/Dmc1が相同組換え反応の中間体を安定化することを明らかにしました。さらに、相同配列は3塩基ずつ比較されることを明らかにしました。また、Dmc1はそれらの3塩基のうち1塩基がミスマッチでも中間体を安定化できることを明らかにしました。Dmc1は減数分裂期の相同組換えにおいて機能する相同組換えタンパク質です。減数分裂期では、少し異なるDNA配列同士の相同組換えによって生物の進化を加速しています。この研究の結果は、減数分裂特異的な相同組換えタンパク質によって、生物の進化が加速されていることを示唆しました。