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研究内容

私たちは、分子レベルの物理的な原理から、具体的な個々の生命現象を理解することを目指して、理論、シミュレーション、および一分子蛍光顕微鏡観察を含む様々な実験による研究を行っています。

生命現象

あらゆる生命現象が研究対象です。

分子レベル

現代の生物科学は、分子レベルからものごとを理解する基本姿勢で発展を続けてきました。とりわけ、物理的な原理からの理解にとって、分子レベルからのアプローチが正攻法だということは間違いありません。

具体性

細胞分子生物学や生化学の教科書をぱらぱらと開いてみると、まるで細胞の中を覗いてきたかのような調子で、複雑で、高度にデザインされた生命現象のスキームが描かれています。それは、それは綺麗な図の連続です。しかし、その中ででたらめに選んだ一つの矢印で表現されている“簡単な”過程が、物理法則にしたがってなぜ実現できるかと自問したら、よく分からない現象ばかりです。細胞分子生物学の教科書は、物理的な生物学研究のテーマの宝庫です。これだけ魅力的な問題の数々を前にして、抽象的あるいは哲学的な一般論に捉われるよりも、個別の現象を、具体的に理解していくことの方が、私にははるかに楽しいことのように思えます。じっくり考察を進めていけば、細胞分子生物学の教科書には当たり前のように書かれていた一本の矢印が、物理的な立場からはそれほど単純じゃなかったり、ひどく間違っていたりする、そういうことから生物の理解が深まっていくというのが本来の生物物理学である、と私は思っています。

物理的な原理

細胞分子生物学の教科書には、“oooはATPのエネルギーを使って進む”類の記述が頻出します。確かにATPの加水分解で放出される自由エネルギー差よりも小さな吸熱反応は、ATPのエネルギーを使えば可能だということがエネルギー収支としては正しいのですが、その過程を、分子が物理に従ってどのように実現しているのかは、まったく自明ではなく、ときには奇跡的なことのようにすら思われます。物理的な原理から理解しようということは、その分子としてのメカニズムを知ることです。

物理的、ということを強調するからといって、物理学としての新規性を追い求めているわけではありません。研究対象はあくまで生命現象であって、その生命現象としての魅力を、できるだけ素直に、理解しようという姿勢を持ちたいと思います。その生命現象は物理法則から逃れられませんから、素直に理解しようとすれば物理的な原理に基づくことが必須になります。ある生命現象を理解するために、旧来の物理学が役に立つのであればそれを使えばよくて、そこに新奇な物理を持ち出すことに意味があるわけではない。旧来の物理学を超える必要が“本当に”あれば、新しい物理学に挑戦することになるでしょう。

非生物系のひとへ

私は、数学や物理に憧れて大学に入ってきました。大学では、数学は難しくってだめでしたが、物理・化学の勉学を楽しみました。生物には、高校以来ずっと暗記科目という印象が拭えず、苦手意識を持っていました(私はどうも、記憶力がかなり悪いのです)。おかげで、学部4年間・修士2年間の間に、生物に関わる講義をただの一つも履修しませんでした。修士卒業時点で二重らせんを知っていたのかどうか、今ではよく覚えていません。そんな私がいまは、生物科学専攻の教員をしているのですから、先のことは分からないものです。

ここで言いたいことは、生物の知識が皆無であっても、私の研究室に入って研究をやっていくことが可能だという点です。研究室で、集中的に細胞生物学の分厚い教科書を読破すればいいわけです。極論すれば、生物なんてまったく知らなくてもなんか生物は面白いかもしれないと漠然と思い始めた人、その代わり物理や化学の基礎を掘り下げて勉強してきたひとに、この研究室は一番合っているのかなあ、と思うのです。

募集

大学院生

当研究室では、大学院生を募集しています。大学院生には、主体的に、研究構想の設定から、研究遂行、問題解決をできるだけ自力で進めていくことを期待します。興味ある方は是非メール等で連絡の上、研究室を訪問してください。入試は、京都大学大学院理学研究科の生物科学専攻で、夏に行われます。

博士研究員

京都大学大学院理学研究科生物物理学系 高田研究室では、生体分子シミュレーション研究に従事する博士研究員を募集しています。興味のある方は下記にお問い合わせください。

連絡先

高田彰二(takada at biophys.kyoto-u.ac.jp)